静岡県浜松市のパーソンセンタードケアを目指す社会福祉法人ほなみ会が運営する特別養護老人ホーム「南風」です。
インタビュー
少しの勇気を持って誰かと繋がる。
旦那さんの事でどのように困っていたのか教えてください。
信子さん迪夫さんは近くの介護サービス(小規模多機能型居宅介護サービス)を利用しながら在宅での生活をしていたのですが、腰椎圧迫骨折が元で徐々に体力が低下し寝込みがちになってしまいました。初めはトイレや風呂場への移動を手伝う程度だったのですが、ベッドから起き上がる事ができなくなった夫の下の世話をするようになった時、もともと体調が悪い私自身が本当に辛くて如何しようも無くなり、入所先を探すようになりました。
南風の事を知ったきっかけや、南風を利用すると決めた理由は?
信子さん夫の体調が悪くなって在宅生活が困難になった時にショートステイを利用しながら入所先を探していたのですが、偶然にも家から徒歩で通える南風へ入所する事ができたのです。その部屋の窓からは自宅を眺めることができて、「ここだったら、自分の部屋にいるみたいで安心だ。」と主人が話したことがあります。若い職員さんもみんな親切に接して下さり、私は「職員」で施設を選びました。
南風への入所で、ご自身の生活や気持ちに変化はありましたか?
信子さんとにかく気持ちが楽になりましたね。一人じゃないと感じるようになりました。
記者夫を施設へ入所させる事への抵抗はありましたか?
信子さん自宅から近いうえに職員さんが親切に対応してくれたので、抵抗というのはあまり感じることはなかったですね。それよりも自分の体調が悪い時期だったので、今まで出来ていた夫の介護が本当に大変になってしまって、自分がパニック状態にまでなっていたので、本当にありがたかったですね。
印象的な思い出があれば教えてください
信子さん夫の排泄がうまくいかず床にこぼれてしまった時、若い職員さんが、「私たちは仕事ですから大丈夫です。安心して下さいね。」と嫌な顔一つせず対応してくれた事がとても印象的でした。
旦那さんを看取った時の状況や感じた事をお聞かせください
信子さん夫の状態がいよいよ悪くなってきた時、職員さんが日々の状況を細く教えてくれた事が大変ありがたく思いました。最後に何かを訴えようと挙げた手が、徐々に降りて夫は息を引き取りました。その時のことを思うと悲しくなりますが、最後を見届ける事ができたことは良かったと思っています。
現在のご自身の状況やお気持ちをお聞かせください。
信子さん厳しく頑固な夫でしたが、こうして一人になってみると寂しさを感じます。私は今、肝臓癌を告知され、余命まで言われているんです。身体の痛みや悩み事を聞いてくれた主人がいないことは寂しさを感じます。夜に物音がして飛び起きた時、寝たきりであっても居てくれるだけで心の支えになっていたように思えます。でも、今は友人やボランティア、南風の職員さんたちが応援してくれています。これからも前向きに生きていこうと思っています。
今、介護をしている人へのアドバイスがあればお聞かせください
信子さん人で悩まず周りの人に話をする事だと思います。悩みを相談できる人がいれば助けてもらう事ができますから、普段から話せる人や何かを任せられる人がいるということが大切なのだと思いますよ。
記者信子さんの家には、普段からご近所の方や民生委員など様々な方達が訪れて様子を見にきてくれますね。信子さんはボランティア活動に参加するなど普段から社交的な生活をしていることで、多くの方々との繋がりがもてたんですね。
信子さんなるべく人と接するように心がけていますが、その中から気の合う話しやすい人を見つけていけば良いと思うのです。
南風で良かったと思うことはありますか?
信子さん特別養護老人ホームなので料金が安く経済的にとても助かりました。お金のことはとても重要なことです。様々な施設がある中で、自分たちが望むサービスが受けられるかを担当者としっかり話をする必要もあると思います。
南風には相談できる職員がたくさんいたので、とても安心できました。それと、何と言っても自宅から見えることろにあったのは、とても心強かったです。毎日主人に会いに行く事もできましたし、そのおかげで職員の方ともお友達になれました。最期は皆さんと一緒に主人を看取ることができたのが、とても良い思い出です。
記者本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。これからも周囲の方々と日々の生活を楽しみながら前向きにお過ごしください。
人物紹介
- 夫服部迪雄さん(はっとりみちお)
- 職業士官学校の憲兵隊長を務めていた
- 性格軍隊へ所属していたので硬い性格で芯があり亭主関白。年老いた妻の両親を案じ、一緒に生活するため呼び寄せるなど、時折見せる優しい一面がある。
- 状況腰椎圧迫骨折から短期入所の利用を始め南風への入所へつながっていく。その後、家族と職員がケアパートナーとして協力し終末期を過ごす。
- 本人服部信子さん(はっとりのぶこ)
- 性格物事を前向きに考え周囲とのコミュニケーションをとるのが好き。愚痴はなるべくこぼさないようにしている。厳しい夫の3歩後ろへ付き従う様な夫婦関係だったが、夫が見せた両親への気遣いにとても感謝している。
- 状況若い頃から膵臓を患っていたが、昨年暮れに肝臓癌が見つかり余命が短い事を医師より告げられるも、前向きに生きようと頑張っている。夫の他界を機に、東京に住む息子の近くに移り住む事も考えている。
- 息子
- 50歳代で東京在住であるが、何かあると遠方から駆けつけてくれる。また母親の身を案じ、欠かさず毎日電話をしている。
- 地域
- 地域住民との関係は良好で、気の合う友人やボランティア、民生委員や南風の職員が毎日信子さんの家に訪れている。